【第2回:後藤コラム】「内発性」という概念が観光地経営を変える


観光という営みは、地域にとっての「外との接点」である。だからこそ、観光による地域づくりは、つい外部の視点や支援、資金に頼りがちになる。だが、地域が本当の意味で「続いていく」ためには、外から与えられる施策や計画だけでなく、地域の中から自ら問いを立て、答えを見出す“内なる力”が欠かせない。

今回のコラムでは、makesが重視する観光地経営における「内発性(Endogeneity)」という概念に焦点を当て、その意義と実践的な意味を掘り下げたい。


■ 「内発性」とは何か

「内発性」とは、地域内部にある資源、価値観、関係性、そして当事者意識に基づいて、自ら課題を定義し、解決策を見出していく力のことである。単なる“地元主導”や“ボトムアップ”とは異なる。外部の資金や支援者の力を否定するのではなく、それらを“触媒”として活かしながらも、最終的な意思決定や行動の軸が地域の中にある状態を指す。

観光を「外から来る人のためのもの」と捉えるのではなく、「地域の未来を形づくる営み」として自分たちの手に取り戻す。これこそが、makesが考える持続可能な観光地経営の根幹にある姿勢である。


■ なぜ今、「内発性」が求められるのか

地方自治体や観光協会、DMOの現場で日々活動をしていると、こんな声をよく耳にする。

「行政が方針を示してくれないと動けない」
「補助金が終われば、この取組も終わってしまう」
「専門家がいないから何をすればいいかわからない」

これらはすべて、外部依存によって引き起こされる“地域の無力感”の表れである。今や観光を取り巻く環境は、人口減少、財源の縮小、気候変動など、ますます不確実性が高まっている。だからこそ、地域が自ら動ける力、つまり「内発性」が何よりも重要になってくるのだ。

特にDMOにおいては、近年「戦略的観光地経営」や「KPI管理」といった言葉が強調されるようになっている。これは、国や自治体の側も、DMOが自ら考え、判断し、動く組織になることを求めていることの裏返しでもある。


■ 内発性を構成する3つの要素

では、内発性とはどうすれば育まれるのだろうか。makesでは、以下の3つの要素が重要だと考えている。

① ビジョンと「形成的相互作用」

地域の内発性を育むうえで最も重要なのは、「この地域をどうしていきたいのか」というビジョンを、誰かが“決める”のではなく、多様な関係者が“共に育てる”ことである。

ここで鍵となるのが、「形成的相互作用(formative interaction)」という考え方だ。これは、地域の中に存在する異なる立場の人々——自治体、観光事業者、住民、外部支援者など——が、相互に影響を与え合いながら、新たな価値や方向性を“共に形づくっていく”関係性を指す。

つまり、一方的に指示を出す・受けるのではなく、「一緒に考え、変わっていく」プロセスこそが、内発性の土台を築くのである。

② 自主財源と意思決定の自由度

内発性が機能するためには、「自分たちの判断で使えるお金」が必要だ。補助金頼みでは、結局は国の方針や予算に引きずられてしまう。makesが重視する「稼ぐ力」とは、単なる利益ではなく、戦略的な自由度の源泉でもある。

たとえば阿寒湖温泉では、地域内で入湯税のかさ上げを議論し、納得の上で導入に至った。その結果として得られた財源は、地域戦略に基づいて再投資されている。ここにこそ、自立的な観光経営の姿がある。

③ “自分ごと化”と関係性資本

最後に重要なのは、関わる人々がその取組を“自分ごと”として捉えられるかどうかである。makesの現場でも、多くの地域でワークショップや対話の場を設け、「これは自分たちのまちの話だ」という実感を持ってもらうことを重視してきた。

この“自分ごと化”を支えるのが、関係性資本である。立場や業種を超えて、ゆるやかにつながる人々の関係性こそが、内発的な観光地経営を下支えする社会的インフラになる。


■ 「外に頼らず、外とつながる」経営へ

内発性は、決して“排他的”な考え方ではない。むしろ、外の知見や資源を柔軟に取り入れつつも、それを地域の中で噛み砕き、再構成し、自分たちの文脈で活かす能力を意味する。

観光における“自立”とは、誰の力も借りないことではない。むしろ、他者とつながることで地域が強くなる。その前提として、「私たちは何をしたいのか」「なぜ観光に取り組むのか」という内発的な問いが、常に必要なのである。


■ コラム連載に寄せて

このコラムでは、makesが現場で大切にしている観光地経営の視点を、毎回テーマを設けて深掘りしていく。今回は「内発性」という観点から、地域が観光に主体的に取り組むための条件を整理した。

次回は、この内発性の土台となる「形成的相互作用」について、さらに詳しく取り上げたい。自治体、事業者、住民、支援者が、どのように交差し、どのように共創を生んでいくのか。実例とともに、その可能性を探っていく予定である。

株式会社makes 代表取締役 後藤 直哉

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