【第10回:後藤コラム】「地域間連携と広域プロモーション」で観光の旗振り役に

観光地経営を進めるうえで、地域間連携と広域プロモーションは欠かせない視点である。単独の企業が行うプロモーションには経費面で限界があり、市町村単位での取り組みも、訪日外国人の観光行動の広がりを考えれば範囲が狭すぎる。観光客は行政区分に沿って旅をしているわけではなく、テーマや体験価値を求めて複数の地域を自由に周遊している。そのため、複数の地域や事業者が手を携え、広域的な視点で情報発信を行うことが不可欠である。


■ DMOが担う意味

こうした広域的なプロモーションを調整し、推進できるのはDMOである。地域連携DMOは、地域DMOや市町村の観光協会、さらには個別の観光事業者と連携し、共通のテーマを定めて伴走型のプロモーションを展開する立場にある。ここで重要なのは、DMOが単なる調整役にとどまらず、旗振り役として地域全体の方向性を示し、実際の実行段階までリードしていくことである。

DMOが旗振り役を担う意味は大きい。もし各事業者がバラバラに情報発信をすれば、内容は重複し、消費者にとって分かりづらいプロモーションとなってしまう。市町村ごとに独自の施策を行っても、観光客の目には分断された情報として映るだろう。だからこそ、DMOが俯瞰的な立場から方向性を定め、連携の枠組みを築くことが求められている。


■ テーマ設定とR-STP分析の活用

効果的な広域プロモーションの前提には、明確なテーマ設定が欠かせない。その際に役立つのが、R-STP分析である。

●Research(調査):観光客の行動やニーズを調べ、市場構造を把握する

●Segmentation(市場細分化):国籍、年齢、嗜好などでターゲットを分ける

●Targeting(ターゲット設定):重点的に狙う市場や層を決定する

●Positioning(位置づけ):競合との差別化や独自の価値を明確にするこのプロセスを踏むことで、単なる地域の寄せ集めではなく、連携によって生まれる新たな魅力を「ひとつの観光ストーリー」として打ち出すことができる。たとえば、「古都と現代文化」「自然と食の周遊」「歴史と温泉」といったテーマを設定し、その軸に沿って各地域が役割を担えば、観光客にとって理解しやすく、一貫性のある魅力的な旅程を提示できるのである。


■ 広域プロモーションの実践と伴走型の役割

広域プロモーションは、単に観光地を横並びに紹介するものではない。むしろ、複数の地域を有機的に結び付け、テーマに沿ったパッケージとして発信することに意味がある。観光客にとって「このテーマで旅をすれば、日本をより深く理解できる」という納得感が得られることが重要だ。

そのためにDMOは、関係する事業者や行政と連携しながら、戦略の設計から実行、効果検証までを一体的に担う伴走型の役割を果たす必要がある。ターゲット市場に適した媒体やチャネルを選び、ファムツアーや現地プロモーションといった具体的施策を設計するのもDMOの責任である。さらに、実施後には効果を数値化し、関係者と共有することが、次の連携や投資を引き出す基盤となる。


■ 本来の旗振り役としての姿

地域間連携と広域プロモーションは、個別の事業者や市町村だけでは実現が難しい領域である。だからこそ、DMOが旗振り役となり、テーマ設定に基づく連携と伴走型のプロモーションを推進することが必要である。DMOは、行政や事業者の間に立つだけでなく、地域観光全体の方向性を示す「羅針盤」としての役割を担うべき存在なのだ。


■ まとめ

地域間連携と広域プロモーションは、観光客の行動に即した戦略であり、単発の施策ではなく地域全体の競争力を高めるための重要な取り組みである。

●個別の事業者や市町村では限界がある

●DMOが旗振り役となって連携を束ねることが必要

●R-STP分析を活用し、テーマ設定からプロモーションを組み立てる

●成果を検証し、次の取り組みに還元する

この一連の流れを主導できる存在こそがDMOであり、その役割を果たすことが持続可能な観光地経営の前提条件ではないか。

次回は、この旗振り役としてのDMOが、どのようにガバナンスを確立し、持続的に機能するかについて考えてみたい。

株式会社makes 代表取締役 後藤 直哉

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