【第8回:後藤コラム】「財源の確保と循環」が観光地経営の持続性を決める
DMOにとって最大の悩みのひとつが「財源の確保」である。多くのDMOは行政からの補助金や委託事業に依存しているが、それだけでは安定した活動を継続することは難しい。補助金が打ち切られれば活動が縮小し、組織の基盤そのものが揺らいでしまう。
■ 行政依存からの脱却
もちろん、行政の支援は不可欠である。しかし、行政のみを頼りとするのではなく、DMO自身が自主事業を展開し、収益を確保することが求められている。観光コンテンツの造成・販売、データを活用したコンサルティング、地域ならではの商品の開発・販売など、収益源を多角化する工夫が必要である。
■ 会員制度と会費収入の重要性
日本のDMOにとって特徴的なのが、会員制度である。DMOの会員は単なる支援者ではなく、活動の担い手であり、財源面でも重要な存在である。
・会員からの会費収入は、補助金に左右されない安定的な財源となる
・会員が自らの事業に役立つと感じる活動を提供することが、DMOの責任である
・会費を払う会員が「このDMOに加入して良かった」と思える活動設計こそが、持続可能な財源確保の鍵となる
現状では、会員制度を十分に活用できていないDMOも少なくない。しかし、本来あるべき姿は、会員を「地域経営のパートナー」として位置付け、会費を通じて互いに支え合う関係を築くことではないか。
■ ステークホルダーとの協力関係
さらに意識すべきは、関係するステークホルダーも財源面で協力関係を築くことである。DMOは地域の広報・マーケティング部隊という位置付けであり、その活動は観光事業者だけでなく、商工業、農林水産業、交通事業者など広範な産業に利益をもたらす。
したがって、これらの関係者が「自分たちの広報組織」としてDMOを支える共通認識を持つことが重要である。現状ではそのような体制を実現できているDMOは多くはないが、本来は地域全体で支え合う仕組みが必要である。
■ 海外の事例に学ぶ
海外には、こうした仕組みを実現しているDMOが存在している。例えば欧米の主要都市では、観光関連事業者だけでなく、金融機関、不動産業、小売業など幅広いプレイヤーがDMOの活動を支援している。理由は明快で、観光によるブランド発信は地域経済全体の価値向上につながるからである。
米国の一部都市では、ホテル宿泊税の一部をDMOに還元する仕組みが確立されており、安定財源として活用されている。また欧州では、会員制度を整え、観光に直接関わらない事業者も含めた大規模なネットワークを形成し、会費収入を基盤に活動を展開している事例も見られる。こうした取り組みは、日本のDMOにとっても大いに参考になるだろう。
■ 日本のDMOに必要な視点
日本においても、DMOを「行政からの受託先」としてではなく、「地域の広報・マーケティング部隊」と位置付ける共通認識を持つことが必要である。
・自主事業を通じた収益確保
・会員制度を基盤にした会費収入の拡充
・ステークホルダーからの財源的支援
・税制度や協賛スキームを活用した安定財源化
これらを組み合わせることで、DMOは短期的な補助金に左右されず、長期的な視点で地域経営に取り組むことができるだろう。
■ まとめ
財源の確保と循環は、DMOの存続と地域経営の持続性を決める要である。現状、日本では行政依存のDMOが多く、自主事業やステークホルダーからの支援を十分に得ている組織は少ない。しかし、本来あるべき姿は、地域全体がDMOを自らのマーケティング部隊と認識し、会員制度を含めて財源を共に担うことである。
その実現に向けて、海外の先進事例から学びつつ、地域に合った財源モデルを構築していくことが、日本の観光地経営にとって避けて通れない課題ではないか。
次回は、こうした財源を活かすための「投資と成果の見える化」について取り上げる予定である。
株式会社makes 代表取締役 後藤 直哉
